始発

尻尾の曲がった野良猫と一緒に乗り込んだ
霧雨を裂いて進む列車の中には 僕を知らない顔はいない
留まる駅で響き鳴る、水の音
それでも見つけられはしないだろう
縛られる前に身包み剥ぎ取って 言葉を捨てられるのは
僕しかいない

外へ出て行くのは帰ってからにしよう
罪の上の噂を詰め込む内ポケット
外へ出て行くのは帰ってからにしよう
塗り直した話が浮き立つ泡の街
改札口の下 するりと潜る尻尾の示す方向は
歪な角度で待っている

そんなに迷って迷ってどこに行ける
外へ出て行くのは帰ってからにしよう

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北海道の本当に田舎の町で育ち、18歳の時に実家を出て大阪にやってきました。
高校生の当時は、ここを出たいという強い思いがあった訳じゃなかったと思いますが、今振り返ってみれば、噂や同調圧力にまみれた田舎特有の閉塞感に辟易とし、都会に飛び出したいという気持ちが潜在的にあったのかも、とこの詩を読んで思います。

大学時代は都市の生活に楽しい毎日でしたが、最近は目まぐるしい日々に疲れを感じることも多く、田舎が恋しくなることもあります。都会で生きる社会人というのは、いろいろ大変ですね。
ただ、どっちが良い悪いではどっちにも良さがあって、どっちにもデメリットがある。そのことを忘れないようにしたいものですね。